
フランスの画家、クロード・モネが愛した、フランス・ジヴェルニーの庭をモデルにした北川村「モネの庭」マルモッタン。
色彩豊かなパレットを思わせる「花の庭」、モネの描いた睡蓮の風景に出合う「水の庭」、モネが魅せられた地中海の光を表現した「光の庭」が四季折々に美しい風景を見せてくれる人気のスポットです。
今回は、庭師たちが最も忙しい“冬の休園期間”に園内を見せていただきました。

お話を聞かせていただくのは、庭園管理人の小原広延さん(左)と町田結香さん(右)。
小原さんは、機械製造の仕事から転職して5年目の庭師で、バラの手入れと睡蓮の手入れを担当しています。
町田さんは、小さい頃からモネの庭が大好きで、大学で植物について学んだ後、牧場や花農家で働きながらモネの庭のスタッフ募集の機会を待ちました。
3年前にそのチャンスが訪れ、季節ごとに花を植え替える作業を担当しています。

冬のモネの庭は、木々が葉を落としてすっきりさっぱりした風景。
ところどころに蝋梅やサザンカなどの花が咲き、色を添えます。
「実を食べに来る鳥たちがかわいくて」と町田さん。
「今年は暖冬で、まだ睡蓮が咲いちゅう。いつにないこと」と小原さん。
1年を通して人々の目を楽しませてきたバラのアーチも、その名残を見せています。

水の庭では、モネの絵や池の手入れについて、小原さんが詳しく解説してくれます。
「モネが睡蓮の絵を描き始めたのは59歳。この絵で一番大事にしているのは何だと思いますか? まわりの景色が映り込んだ水鏡です」。
この水鏡を美しく保つためには手入れが必要で、5月~10月の間は、週に1回池に入り、落ち葉や小枝、睡蓮の花がらなどを取る作業をしているそうです。

モネの庭の睡蓮は、温帯性と熱帯性があり、モネが憧れた青い睡蓮は熱帯性。寒さに弱いため、冬は温室の中で過ごします。
「花はどうでも咲いているわけではないんですよ。睡蓮は鉢植えで、モネの絵をイメージして配置し、花の見え方をコントロールしているんです」と小原さん。水は奈半利川から汲み上げた水をろ過しながら循環させ、いつもきれいな水をたたえているため、澱みなく池の底まで見え、水鏡も美しく保たれるのだそうです。

池の東側には、町田さん渾身の作となる「チューリップの丘」。
ここには、約3万球のチューリップの球根が植えられ、春を待っています。
「モネが描いたチューリップの絵を見ながら、その筆致を再現するように球根を並べました」。
3月上旬に咲き始め、3月30日・31日には「モネのチューリップ祭」を開催予定。
「もうドッキドキです・・・」と言いながらも、うれしそうな町田さん。

花の庭では、スタッフ総出で植え替えや剪定作業の真っ最中。
バラ担当の小原さんは、アーチや塔の形に作ったバラを支柱から外し、弱った古い小枝を取り除き、新しい芽が出るよう剪定を行っています。
「これをまた支柱に留めていって、形づくっていくんです」。
「木にふれて状態を確かめることが大事なので、手袋はしません」という小原さんの手には、小さな傷がたくさんありました。

水の庭バラのアーチ。見頃は5月頃
農薬を使用せず、自然環境を大切するのがモネの庭の精神。虫たちの楽園でもあります。
しかし、バラにとってカミキリ虫は天敵で、木の根に産み付けた卵がかえり、幼虫が木を食べ枯らしてしまのだそう。
根を消毒する作業も欠かせません。
私たちが目にする美しいバラの影には、たくさんの努力があります。

同じく花の庭で作業中の町田さん。
春に咲く花たちを、咲く時期や花の高さなどを考えながら、並べていきます。
「画家のパレットのように、色とりどりの花が咲き乱れつつ、全体のバランスも大事」。
「この花が終わるころにはこの後ろの花が満開になるように」という組み立ては、それぞれの植物の特性を熟知していないと難しい作業です。

町田さんが撮影した雨上がりの「光の庭」
その町田さんに園内の一番好きな場所を聞いてみると、
「朝露が光る、朝の光の庭です」とのこと。
「季節の変化が楽しめるモネの庭全部が大好きだけど、朝の風景は特別で、これを見られるのはここで働く人の特権です」と町田さん。夕日に染まる閉園後の庭、お客様の足が遠のきがちな雨の日の風景も、スタッフだけが知るモネの庭の魅力です。
園内を管理する庭師は7人、苗を育てる育苗スタッフは5人。
プロの仕事が、モネの庭を支えています。
問い合わせ
北川村「モネの庭」マルモッタン
住所/高知県安芸郡北川村野友甲1100
電話番号/0887-32-1233
開園時間/9:00~17:00(入園は16:30まで)
入園料/一般730円、団体660円(10名様以上)
小・中学生310円、団体280円(10名様以上)
(2019年10月改定)
休園日/火曜日(祝日の場合は営業)、※4月~6月は無休
冬期メンテナンス休園(12月~2月末日)