
かつて城下町として栄えた風情ある町並みを残す佐川町の上町地区界隈に、坂本龍馬や中岡慎太郎らとともに幕末を駆け抜けた志士・田中光顕が収集した、幕末維新期の遺墨コレクションや貴重な資料などを展示している「青山文庫」があります。

笑顔で出迎えてくれたのは、受付や事務を担当している勤務歴14年の山﨑さん。山﨑さんは、元々古文が好きで勉強していたことから学芸員の補助も務めているそうです。展示解説も行っているということなので、案内していただきました。

「青山文庫」は、明治43年に佐川郵便局長を務めていた川田豊太郎の私設図書館「川田文庫」として創立。この活動に共感した田中光顕から運営基金や蔵書が寄贈され、大正14年に田中の雅号・青山をとって「青山文庫」になったそうです。

館内には、坂本龍馬や中岡慎太郎、武市半平太や西郷隆盛、勝海舟など、名だたる志士たちの書状や画を収蔵。これらは、明治以降に宮内大臣も務めたという田中光顕が、同じ時代を生きた志士たちの顕彰を目的として収集したものといわれているそうです。

「本物の資料を取り扱えることが嬉しい」と語る山﨑さん。
「実物の資料を見れば、偉人たちをより身近に感じられる」、「歴史や古文に詳しくない方も、教科書で1度は目にした事のある人物が書いた画や筆跡を楽しんで欲しい」、と話してくれました。

館内にはほかにも、佐川町出身の偉人や佐川町にまつわる資料、江戸時代に佐川の領主であった土佐藩筆頭家老・深尾家に関する資料なども展示。
中には、皇室関係資料や解体新書の翻訳初版本など、希少な資料もあるそうです。

館内の一角には、佐川町出身の有名な植物学者・牧野富太郎の事跡を遺品とともに紹介している「牧野富太郎室」があります。
展示内容は時期によって異なりますが、直筆の資料をはじめ、愛用していた筆や着用していた服などが登場することも!

「青山文庫」では、年に4回程度の展示替えを行いながら、特別展や企画展などを開催。
「展示替えの準備はとても大変ですが、企画展に際し、先人たちについて学んでいると新たな発見に出会えることもあり、とてもやりがいがあります」と話してくれました。

「青山文庫」は、深尾家の家臣・土方氏の屋敷跡に建てられており、江戸時代に造られた美しい日本庭園「九如園」が楽しめるのも魅力のひとつ。
四季折々の風情とともに、当時の武家屋敷の雰囲気も感じることができます。

「青山文庫」はもちろん、周辺に残る伝統的な商家住宅や白壁の酒蔵、明治期の洋風木造建築である「旧青山文庫」など、趣溢れる町並みを散策しながら、偉人たちに想いを馳せてみてはいかがでしょうか?
解説員による展示解説は数日前に予約(土曜、日曜、祝日は当日受付可)。学芸員による詳細な展示解説を希望される方は1〜2ヶ月前に予約してくださいね。
問い合わせ
佐川町立 青山文庫
高知県高岡郡佐川町甲1453-1
電話番号/0889-22-0348
開館時間/9:00〜17:00 ※最終入館は16:30
休館日/月曜、12月29日〜1月3日 ※月曜祝日の場合は開館し翌火曜休館、展示替えの際は臨時休館あり
入館料/一般400円、中高生200円、小学生100円